不登校編⑤ 不登校の我が子に、保護者が本当にできること【元・不登校当事者からのメッセージ】

不登校

はじめに:元・不登校の私が、今だから伝えたい「あの頃の親への本音」

 第1話から第4話にかけて、私が全日制高校でのプレッシャーと家庭・学校のギャップに耐え切れず不登校になり、そこから通信制高校という新しい選択肢に出会って人生を立て直していくまでの軌跡をお話ししてきました。

 毎朝アラームの音に怯え、深夜の暗い部屋でスマホの青白い光を頼りに「高校中退 人生終わり」と検索し続けていたあの頃。私の心は完全に折れ、未来への絶望感でいっぱいでした。

 しかし、当事者である私の心がそんな風にボロボロだった一方で、私の姿を一番近くで見守っていた母親もまた、言い知れない不安と孤独の中で苦しんでいたはずです。

「どうしてうちの子が学校に行けなくなってしまったんだろう」
「私の育て方が悪かったのだろうか」
「このまま引きこもりになって、将来就職できなくなったらどうしよう」

 当時、自分の部屋のドアを完全に閉め切り、話しかけられても冷たい態度しかとれなかった私ですが、実は心の奥底では、誰よりも激しい焦りと罪悪感に苛まれていました。親を傷つけたいわけでも、怠けてサボっているわけでもない。ただ、自分自身の心と体がどうしようもなく壊れてしまい、絶望の淵にいたのです。

 この連載の最終回となる今回は、かつて不登校を経験した「子ども側」の視点と、その後に様々な進路を切り開いてきた大人の視点から、今まさに我が子の不登校や将来に悩んでいる保護者の皆様に向けて、本当に伝えたいメッセージをお届けします。

親の言動で「救われたこと」と「実は追い詰められていたこと」

 子どもが学校に行かなくなったとき、親御さんは「何か声をかけなければ」「どうにかして元に戻してあげなければ」と焦ってしまうものです。しかし、当時の子ども側のリアルな心理からすると、よかれと思ってかけた言葉が、かえって子どもの心をさらに追い詰めてしまっているケースが少なくありません。
 ここでは、当時の私が実際に感じた「逆効果だった親の言動」と「救われたこと」を包み隠さずお伝えします。あくまで、一例としてご参考にしてください。

実は追い詰められていたこと:「問い詰め」と「理由の追及」

よくある言動:「明日は学校に行けそう?」「何が嫌なの? 理由を言ってくれないと分からないよ」「このままだと将来大変だよ」

子どもの本音:当時の私は、自分が学校に行けない理由を、自分自身ですら言語化できませんでした。「環境のプレッシャーが」「人間関係が」と理路整然と説明できるほど、当時の脳みそやメンタルは正常に働いていなかったのです。そのため、そうやって理由を問いただされるたびに、「自分は責められている」「親の期待を裏切るダメな人間だ」と感じ、自分の存在そのものを全否定されたような気持ちになり、より一層部屋の奥へと閉じこもってしまいました。

本当に救われたこと:「無条件の受容」と「静かな見守り」

救われた言動:「学校に行かなくても、お母さんはあなたの味方だよ」という言葉と、あえてそれ以上深く詮索せず、そっとしておいてくれたこと。

子どもの本音:外の世界ですべての自信を失い、ボロボロになって家に逃げ帰ってきた子どもにとって、家が「最後の安全基地」であるかどうかが命綱です。学校に行けていない現実を責めず、ただ一人の人間として大切に扱ってくれること。そして、過剰に干渉するのではなく、適度な距離感を保って見守ってくれることが、当時の私にとって何よりも心の栄養になりました。

ここで重要なのは、「見守る」と「放置(無関心)」は全く違うということです。 放っておくのではなく、「あなたのことは諦めていないし、いつでも味方でいるよ」という温かい気配や安心感を、言葉や態度ではなく、日々の空気感として感じられること。それが、子どもが再び立ち上がるためのエネルギーを溜めるために不可欠なのです。

「人生終わりだ」と思っている子に、大人ができる最大のサポート

不登校になった瞬間、子どもは心の底から「自分の人生はもう詰んだ」「普通のレールから外れてしまったから、もう這い上がれない」と思い込んでいます。全日制高校という小さな世界が世界のすべてだと信じ込んでいるため、そこからこぼれ落ちた自分には、もう未来がないように見えてしまうのです。

そんな暗闇の中にいる子どもに対して、大人ができる最大のサポートは何でしょうか。 それは、説教をすることでも、無理やり外に連れ出すことでもありません。

「世の中には、全日制以外にも生きるためのルートや、学び直しの場所が無数に存在している」という具体的な選択肢を、大人が先に知って、そっと提示してあげることです。

振り返れば、私の母もそうでした。私が「高認でいいや」と投げやりになっていたとき、「高卒の資格はちゃんと取っておきなさい」と導いてくれ、サポート校の雰囲気を一緒に考え、最終的に通信制高校という温かい選択肢にたどり着くまでの道筋を、そっと視野に入れてくれました。

親が慌てず、「学校以外の選択肢なんていくらでもあるんだよ」という落ち着いた態度でいてくれるだけで、子どもは「あ、自分はここで終わりじゃないんだ」「別のルートでも生きていけるんだ」と気づき、張り詰めていた恐怖心がスッと軽くなります。それが、次の一歩を踏み出すための大きな原動力になるのです。

今日から保護者ができる「具体的な最初の一歩」

子どもが自分の部屋から出られず、何日も沈黙しているような時期、親御さんにとっても一番辛く、どう動いていいか分からない時間だと思います。

ですが、子どもがまだ動けない時期だからこそ、親御さんが「水面下でできること」があります。本人の前であれこれ進路の話を迫るのではなく、親が先に知識と選択肢を持っておくことが、結果的に一番の近道になります。

親が先に「通信制高校」などの選択肢を知っておく

「通信制高校って昔のヤンキーが行くところでは?」といった古いイメージを持っている親御さんもまだいらっしゃいますが、今の通信制高校は全く違います。 第3話や第4話でもお伝えした通り、スマホやアプリで自分のペースで学べたり、Slackなどのチャットツールで過度な人間関係のストレスなく高卒資格が取れたり、プログラミングやデザインといった最先端のスキルが学べたりと、むしろ不登校や繊細な子どもたちにとって非常に合理的で優しいシステムが整っています。 「今はこんなに多様で自由な学びの形があるんだ」と親御さんが知るだけで、子供の未来に対する過剰な焦りや不安が自然とスッと和らいでいきます。

資料をそっとリビングや部屋の片隅に置いておく

親御さんが集めた通信制高校のパンフレットや資料を、無理に本人に手渡して「これ読みなさい!」と押し付けるのは逆効果です。 そうではなく、リビングのテーブルの上や、本棚の分かりやすい場所に「そっと置いておく」のです。 子どもは、親が寝静まった後や、少し心が落ち着いたタイミングで、こっそりそのパンフレットを手に取ってページをめくります。写真や卒業生の進路実績を見て、「あ、自分と同じように不登校だった先輩が、こうやって大学や専門学校に進んでいるんだ」「こういうオンライン中心の学校なら、自分にも通えるかもしれない」と、自分の足で未来を想像し始めるきっかけになります。

親の心の余裕は、必ず子どもに伝染します。親御さんが「選択肢を知っている」という安心感を持つこと自体が、家庭内のピリついた空気を和らげる最大の特効薬なのです。

まとめ

全日制高校を中退し、一時は自分の人生の地図が真っ白になってしまった私ですが、通信制高校という場所に出会い、自分のペースで学び直し、小さな成功体験を積み重ねたことで、こうして自分の足で新しいキャリアを切り開くことができました。

今、お子さんが学校に行けず、暗闇の中で立ち止まっていたとしても、それは決して人生の終わりではありません。人生の時計の針が、少しの間だけ「チャージの時間」に入っているだけなのです。

お子さんがいつか自分の意思で前を向くタイミングが必ず来ます。そのときに、親御さんが「うちの子にはこんな選択肢もあるよ」と、温かい手札をスッと出してあげられるように。 まずは親御さんの心の安心材料として、どのような通信制高校があるのか、今の通信制のリアルを無料のパンフレットで覗いてみることから始めてみてください。

一人で抱え込まず、まずは情報を集めて、選択肢の引き出しを少しだけ増やしてみませんか?

全5回にわたってお送りした不登校・通信制高校体験記シリーズをお読みいただき、本当にありがとうございました。この文章が、今まさに不安の中にいるあなたとお子さんの未来を照らす、小さな光になれば心から嬉しく思います✨️✨️

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